フラット登山の表紙

フラット登山

歩くを楽しむ、自然を味わう


本書の要点

  • 本書では、新しい登山のスタイル「フラット登山」を提唱している。フラット登山とは「ロングトレイルほど求道的ではなく、山頂を目指す登山でもなく、かといって散歩ほど短い歩行でもない。都会の散歩よりも深く濃い自然に浸り、つらくならない程度に、ただ歩く喜びを満たす旅」を指す。

  • フラット登山のコース指標は「官能的な山道」であり、「異世界に迷い込んでいる」「広大で開放感がある」「変化に富み、足に快感がある」「冒険心が満たされる」「霊性に畏怖を感じる」の5つの要素で評価する。

1 / 4

【必読ポイント!】新しい登山のスタイル「フラット登山」

そもそも「登山」とは何か?

west/gettyimages

登山にはさまざまな「思い込み」がある。「これが登山だ」と思っていることは、本当なのだろうか。まず、登山とは「頂上まで登ること」だろうか? たしかに頂上からの景色は素晴らしく、気持ちも良いものだ。しかし、頂上に行かずとも眺めの良い峠などはある。著者はあるときから、「頂上を目指さなくてもいい」という結論に行き着いた。また、登山とは「スリルを味わうこと」なのだろうか? ナイフのように鋭い稜線、ゴツゴツとした岩稜の鎖場、広大な森林で道迷いの不安。こうしたスリルを求めすぎると、「命を喪(うしな)う」危険性がある。雪山登山の経験のない人がいきなり難易度の高い高山にチャレンジして、遭難してしまうのもこのケースだ。実力のともなわないスリルは、ただ危険なだけである。さらに、登山の醍醐味は「達成感を味わうこと」なのだろうか? 頂上に到達したときには、えも言われぬ達成感がある。しかし、このような達成感を求めすぎる姿勢には、時代遅れの感が否めない。「右肩上がりで成長した先には、ハッピーエンドが待っている」という発想自体が、前時代的なのだ。現代は「いま、この瞬間の幸せを持続的に味わう」という価値観が主流である。登山も、頂上というゴールを目指すだけでなく、「この山道を歩いている、この瞬間が気持ちいい」という感覚を求めていいはずだ。登山の楽しさの本質は、「歩く」という行為そのものの中にある。本書では、登山をそのように再定義したい。

「フラット」である3つの理由

著者は、新しい登山のスタイル「フラット登山」を提唱している。求道的なロングトレイルや、山頂を目指す登山ではない。かといって、散歩ほど短い歩行でもない。都会の散歩よりも深く濃い自然に浸り、つらくならない程度に、ただ歩く喜びを満たす旅――それが「フラット登山」のスタイルだ。フラット登山の「フラット」には、3つの意味がある。1つ目は、「平坦で広大な大地」だ。頂上を目指すことにこだわらず、大地をフラットに移動しながら歩く喜びを満喫する。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3348/4228文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.05.31
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

庭の話
庭の話
宇野常寛
言葉にならない気持ち日記
言葉にならない気持ち日記
梅田悟司
2030年の不動産
2030年の不動産
長嶋修
対話のトリセツ
対話のトリセツ
黒川伊保子
最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣
最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣
堀田秀吾
宇宙ビジネス
宇宙ビジネス
中村友弥
はじめてのスピノザ
はじめてのスピノザ
國分功一郎
大学教授のように小説を読む方法[増補新版]
大学教授のように小説を読む方法[増補新版]
トーマス・C・フォスター矢倉尚子(訳)

同じカテゴリーの要約

休養ベスト100
休養ベスト100
加藤浩晃
一流の研究者たちが教える 快眠の科学
一流の研究者たちが教える 快眠の科学
伊藤和弘三島和夫(監修)
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
ピョートル・フェリクス・グジバチ
「心のHPがゼロになりそう」なときに読む本
「心のHPがゼロになりそう」なときに読む本
鈴木裕介
歩くとなぜいいか?
歩くとなぜいいか?
大島清
感情的にならない本
感情的にならない本
和田秀樹
スマホ脳
スマホ脳
アンデシュ・ハンセン久山葉子(訳)
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
リセットの習慣
リセットの習慣
小林弘幸
我慢して生きるほど人生は長くない
我慢して生きるほど人生は長くない
鈴木裕介