2030年あたりには、景気動向、人口の増減、海外からの移住、投資家の動きといった不動産を取り巻く環境も大きく変化するはずだ。本書ではそれを7つにまとめているが、要約では2つをピックアップしたい。
まずは、「少子高齢化と人口減少のさらなる進行」だ。2010年から減少に転じている人口は、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に推計した「日本の将来推計人口」によると、2030年にはおよそ1億2011万人になると予想されている。そのうち3割以上は65歳以上で、生産年齢人口は約7075万人である。
これは、国内の不動産の買い手が減少することを意味する。しかし一方で、都心部のマンションバブルも膨れ上がっている。エリアによって、「『不動産格差』が拡大している」ということだ。
人口の減っている地域はさらに過疎化が進む。広いエリアにまばらに人が住んでいる状態を改善、効率化するために、立地適正化計画が求められている。医療・福祉・商業施設などを居住地の誘導区域に近接させ、公共交通ネットワークを再配備し、コンパクトシティ化を目指す。コンパクトシティの外に移転する人はいなくなり、不動産価値も下がる。エリアごとの不動産格差はさらに大きく広がるだろう。
マイナス金利が解除されている以上、インフレの継続と所得水準の上昇が確認されるのであれば、「今後は利上げに向かっていく」ことが予想される。2、3%でも住宅ローン負担はかなり大きくなるため、郊外エリアでは住宅価格が押し下げられるだろう。逆に、富裕層や投資家が即金で購入するような10億円超えの物件がある都心一等地では、平均価格が大きく下がることはないはずだ。
「金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる」と言われるが、アジアのプレゼンスが高まっていく世界経済の状況下では、日本株もその恩恵を受けて価値が上昇していく可能性が高い。政局によっては米国株や米ドルが弱含みになり、緊急避難として円が買われて円高になるかもしれない。輸出産業の多い日本では円安になったときに売上高が増えて株高になると言われているが、実際には内需偏重なので、円安相場では輸入品の高騰を輸出の増加がカバーできない。したがって、震災時などではない平常運転のときは、円高のほうが株高になると考えられる。
不動産のような実物資産は、自然災害などが起きないかぎり、「中長期的に有望と言える」。
2030年には不動産市場の「三極化」が進むという。「上がる地域」「下がる地域」「限りなく無価値、あるいはマイナスの地域」の3つだ。価格維持もしくは上昇となる地域は全体の15%程度で、70%は価値が下がり、あとは無価値ないしマイナスということになる。
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