2030年の不動産
2030年の不動産
著者
2030年の不動産
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2025年03月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

分譲か、賃貸か。戸建てか、マンションか。都会か、郊外か。まるで永遠に答えの出ない難問のように語られている、これらの選択肢。それぞれのライフステージのなかで、多くの人は一度くらい意識したことがあるはずだ。

本書は、2030年という近未来を想定して、この「難問」に対する実際について、懇切丁寧に解説してくれる。著者は、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社を設立した人物であり、その目線と姿勢は折り紙つきである。

本書でも指摘されているとおり、世界ではアジア圏の勢いが増している。そのなかで日本はシュリンクしていくばかりの国とみなされがちだが、治安はよく、インフラの整備状況、街の清潔さを考慮すると、「住むなら日本が一番だ」と再評価する声はむしろ高まっていくという。外国からの投資が増え、都心部を中心に地価は高騰し、庶民の選択肢はますます狭まるように感じてしまう。それでも著者は、「日本の未来は明るい」と述べる。

2030年は、本書が刊行された2025年現在からするとたった5年後だが、環境は大きく変わっているだろう。それにあわせて当然、不動産の“常識”は変わる。その中身を知っているかどうかで、あなたの未来も変わる。

住まいは誰にも関係のあるテーマだ。どのような状況で生きていくにせよ、自らのQOLを向上させる選択をしたい。そのために、本書で得られる知識は大きな武器となってくれるに違いない。

著者

長嶋修(ながしま おさむ)
1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、株式会社さくら事務所を設立、現会長。2008年、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会設立、理事長に就任。2018年、らくだ不動産株式会社の会長に就任(現顧問)。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任し、中立な不動産コンサルタントとしての地位を確立。新著に『グレートリセット後の世界をどう生きるか 激変する金融、不動産市場』(小学館新書)他。著書・メディア出演多数。NHKドラマ『正直不動産』監修。

本書の要点

  • 要点
    1
    2030年あたりには、景気動向、人口の増減、海外からの移住、投資家の動きといった不動産を取り巻く環境も大きく変化するはずだ。
  • 要点
    2
    2030年には不動産市場の「三極化」が進む。「上がる地域」「下がる地域」「限りなく無価値、あるいはマイナスの地域」の3つだ。
  • 要点
    3
    2030年に都市部でマイホームを買おうとしたら、「第一候補は中古マンションになっている」だろう。その際、「管理に問題のあるマンション」を選ばないようにしよう。

要約

不動産を取り巻く変化

コンパクトシティ

2030年あたりには、景気動向、人口の増減、海外からの移住、投資家の動きといった不動産を取り巻く環境も大きく変化するはずだ。本書ではそれを7つにまとめているが、要約では2つをピックアップしたい。

まずは、「少子高齢化と人口減少のさらなる進行」だ。2010年から減少に転じている人口は、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に推計した「日本の将来推計人口」によると、2030年にはおよそ1億2011万人になると予想されている。そのうち3割以上は65歳以上で、生産年齢人口は約7075万人である。

これは、国内の不動産の買い手が減少することを意味する。しかし一方で、都心部のマンションバブルも膨れ上がっている。エリアによって、「『不動産格差』が拡大している」ということだ。

人口の減っている地域はさらに過疎化が進む。広いエリアにまばらに人が住んでいる状態を改善、効率化するために、立地適正化計画が求められている。医療・福祉・商業施設などを居住地の誘導区域に近接させ、公共交通ネットワークを再配備し、コンパクトシティ化を目指す。コンパクトシティの外に移転する人はいなくなり、不動産価値も下がる。エリアごとの不動産格差はさらに大きく広がるだろう。

金利のじわり上昇
flyingv43/gettyimages

マイナス金利が解除されている以上、インフレの継続と所得水準の上昇が確認されるのであれば、「今後は利上げに向かっていく」ことが予想される。2、3%でも住宅ローン負担はかなり大きくなるため、郊外エリアでは住宅価格が押し下げられるだろう。逆に、富裕層や投資家が即金で購入するような10億円超えの物件がある都心一等地では、平均価格が大きく下がることはないはずだ。

「金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる」と言われるが、アジアのプレゼンスが高まっていく世界経済の状況下では、日本株もその恩恵を受けて価値が上昇していく可能性が高い。政局によっては米国株や米ドルが弱含みになり、緊急避難として円が買われて円高になるかもしれない。輸出産業の多い日本では円安になったときに売上高が増えて株高になると言われているが、実際には内需偏重なので、円安相場では輸入品の高騰を輸出の増加がカバーできない。したがって、震災時などではない平常運転のときは、円高のほうが株高になると考えられる。

不動産のような実物資産は、自然災害などが起きないかぎり、「中長期的に有望と言える」。

異次元の不動産格差

上がる地域と下がる地域
y-studio/gettyimages

2030年には不動産市場の「三極化」が進むという。「上がる地域」「下がる地域」「限りなく無価値、あるいはマイナスの地域」の3つだ。価格維持もしくは上昇となる地域は全体の15%程度で、70%は価値が下がり、あとは無価値ないしマイナスということになる。

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要約公開日 2025.06.01
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