ジェフ・ベゾス 果てなき野望

アマゾンを創った無敵の奇才経営者
未読
ジェフ・ベゾス 果てなき野望
ジェフ・ベゾス 果てなき野望
アマゾンを創った無敵の奇才経営者
未読
ジェフ・ベゾス 果てなき野望
出版社
日経BP
出版日
2014年01月08日
評点
総合
4.2
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本にとどまらず、衣類や家電、食品まで、いまや生活のあらゆるものを買い揃えることができるアマゾン。ショッピングの手段としてあまりに身近なものとなったため、近所のスーパーに行くよりもアマゾンで購入するという人も大勢いると言われている。

本書はアマゾンの立ち上げから、現在に至るまでの道程を緻密に描いた一冊だ。アマゾンは当初、出版社から好意的に受け入れられたが、次第に業界を揺るがす脅威として捉えられ、キンドル発表時には新刊書に強引な値付けを行うことが明らかになり、ついに敵対視されるまでになる。社内外に大小様々な傷跡を残していきながらも凄まじい成長を続けるこの企業のスピード感は、読者にとって一種の興奮を与えてくれるだろう。

また、アマゾンを率いるジェフ・ベゾスの「野望」は果てしなく、スティーブ・ジョブズにも劣らない特異な性格や才能が感じられる内容となっており、一人の起業家の半生としても興味深い内容になっている。

同時に、クレジットカード情報を登録しておけば、その名の通り一回クリックするだけで商品が買えてしまう「ワン・クリック」や、購買履歴からその人に合った商品を示してくれる「レコメンド機能」など、私たちの購買意欲をますます刺激するためのテクニックが生まれた背景、どんなに損失を出しても顧客中心に考えるベゾスの思考法は参考になるところが多い。

綿密な取材によって完成された500ページ超もある本書だが、冗長なところは一切なく、2014年の必読本の一冊であることは疑いようがない。

ライター画像
苅田明史

著者

ブラッド・ストーン
ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のシニアライター。ニューズウィーク誌、ニューヨーク・タイムズ紙などで15年にわたり、アマゾンやシリコンバレー企業について報道してきた。カリフォルニア州サンフランシスコ在住。

井口 耕二
1959年生まれ。東京大学工学部卒、米国オハイオ州立大学大学院修士課程修了。大手石油会社勤務を経て、1998年に技術・実務翻訳者として独立。翻訳活動のかたわら、プロ翻訳者の情報交換サイト、翻訳フォーラムを友人と共同で主宰するなど多方面で活躍している。

滑川 海彦
千葉県生まれ。東京大学法学部卒。東京都庁勤務を経てフリー。IT分野の評論と翻訳を手がける。ITニュースブログ「TechCrunch Japan」翻訳チーム。

本書の要点

  • 要点
    1
    ベゾスが起業を決断した理由は、将来自分の人生をふり返ったとき、目の前の高い給料を失うことよりも起業しなかったことの方が心から後悔する可能性が高いと考えたからである。
  • 要点
    2
    ベゾスは他のテクノロジー企業のトップと同様、部下を厳しく叱責する、気性が激しい人物である。一方、彼の指摘はいつも的確で、顧客を第一に考えた施策を実行していくことでアマゾンを成功に導いてきた。
  • 要点
    3
    出版業界は当初アマゾンを歓迎したが、キンドルによってアマゾンが覇権を握るようになると、その存在を脅威と見なした。いまやアマゾンは単なるECサイトを超える存在になりつつある。

要約

アマゾン誕生

後悔最小化理論
Anatoliy Babiy/iStock/Thinkstock

アマゾンの2012年の売上高は610億ドル。利用者はますます増加している。1000億ドル突破も十分視野に入っており、今となってはその影響力は計り知れないほど強大なものとなった。

『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』という邦題の通り、いまやアマゾンが抱く野心はライバル会社を恐れさせている。ビジネス世界で「アマゾンされる」(To be Amazoned)と言えば、アマゾンによって「自社の従来型事業から顧客と利益を根こそぎ奪っていくのをなすすべもなく見る」という意味になるのだという。

アマゾンのアイデアが誕生したのは1994年。ウォールストリートの金融工学の会社で働いていたベゾスは、インターネットの成長率の高さに驚き、あらゆるものを販売する「エブリシング・ストア」を考案する。

最初からエブリシング・ストアを立ち上げるのは困難だと考えたベゾスは、20種類もの取扱商品の候補のなかから書籍を選んだ。書籍は差別化とは無縁の商品で、ユーザーが商品の質を気にすることなく買い物ができ、取次会社を使えばたくさんの出版社にひとつずつ当たる必要がない。さらには書籍のスーパーストア、バーンズ&ノーブルでも300万点以上に及ぶ書籍の全在庫を持つことは不可能で、オンラインでしか実現できない店舗を作ることができる。

退職してオンライン書店を始めるつもりだというベゾスは、所属していた会社のオーナーから強く慰留された。しかし起業を決断した背景には、遠い将来に人生の岐路をふり返ったときに「インターネットという、世界を変える原動力になると思ったものに身を投じなかった場合、あのときやっておけばよかったと心から後悔する可能性がある」という考えがあった。このエピソードはインターネット起業の伝説となっている。

社是は「早くでかくなる」

1996年に入るころには、アマゾンの売上は月に30%から40%も伸びるようになっていた。成長速度はすさまじく、計画は役に立たないし、社員も当時のことをよく思い出せないほどだという。

同年の春には米国出版社協会の年次総会でオンライン販売が評判になっていると話題になり、その2~3週間後にはウォール・ストリート・ジャーナル紙の一面にアマゾンの特集記事が掲載される。

また、その夏にはアマゾンが生み出す最初のイノベーションが登場した。書籍を購入するようアマゾンに誘導すると、誘導したウェブサイトに紹介料が入る仕組みだ。承認サイトに対する紹介料率は8%。アマゾンのプログラムは、アフィリエイトマーケティングと呼ばれる何十億ドル規模の業界を生み出した。

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要約公開日 2014.04.25
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