著者が乳幼児教育の道を歩むことを決めたのは、大学3年生の時だった。社会をよりよく変えたいという思いが強く、政治家を目指していたが、大学3年の時に出会った教育学の教授に「社会を変えていけるのは『教育者』として自分と同じ思いを持つ人を育てることだ」と聞かされ共感する。
乳幼児教育分野へ興味が絞られたきっかけは、教育実習体験だった。実習先の高校で、高校生はすでに人としての基本的姿勢が出来上がっていると実感した。そこで、基本を身につける幼少期の教育への関心が強まった。幼稚園を経営していた父の影響も大きかったという。
著者は大学卒業後に幼稚園免許を取得するため、昼は父が経営する幼稚園で働き、夜は近くの短期大学の幼児保育科に通っていた。しかし、保育の現場を知るほどに、父の行う「一斉保育」と自分の理想とする保育が乖離していると、身をもって感じた。
一斉保育は、保育者がねらいを持って指導案を設定し、それに基づいて保育を行う。先生から課題を与えられて取り組む子どもたちの中には、楽しそうではない、やりたくないという表情をする子もいたという。
著者自身、興味・関心がないことには全くやる気が起きない人間であったことから、一人ひとりの個性や特技を伸ばせる保育がしたいと考えるようになった。
ある日、父の知人の幼稚園園長に胸の内を告白したところ、著者がやりたいことを実践している先生として、堀合文子先生を紹介される。堀合先生は、「日本のフレーベル」と呼ばれる倉橋惣三先生の弟子であり、「保育の神様」と呼ばれる人物だ。
著者は堀合先生に会うため十文字女子大附属幼稚園を訪れた。そこで保育への熱い思いと保育実習をしたい旨を伝えると、快諾された。
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